「沈まぬ太陽」が終わらない2つの理由 日本航空123便墜落事故

Sponsored Links

「沈まぬ太陽」が終わらない2つの理由 日本航空123便墜落事故

1985年8月12日18時56分、日本航空羽田発伊丹行き123便、ボーイング747が御巣鷹山に墜落し、520名の尊い命が奪われました。

航空機事故で520名という人数が亡くなる前代未聞の惨劇を描いた小説が山崎豊子氏(1924-2013)の「沈まぬ太陽」です。

山崎豊子氏は長期に渡る渾身の取材を敢行し、遺族の悲しみに泣き、政官財癒着に怒り、様々な圧力に屈することなく1999年に週刊新潮で連載を開始。2001年に3編5巻の小説として刊行され、700万部を売り上げました。

恐らく多くの方に影響を与えたと思われる「沈まぬ太陽」。筆者は常に頭のどこかにこの本があり、その理由は恐らく「御巣鷹山編」に描かれた想像を絶する凄惨で、かつ憤りの持って行く先のない遺族の方々の深い悲しみを描いた3巻を読んだ時のこと。

当時のニュースでは知ることができなかった、事故現場に駆け付けた県警、自衛隊、消防、医師、日本赤十字、ボランティアの方々の壮絶かつ献身的な人間として崇高な彼らの行動を読み、電車の中で涙してしまったことあると思います。

Sponsored Products

そして、今でも筆者には「沈まぬ太陽」を終わらすことができない2つの理由があります。

  1. 名門「東芝」が倒産した理由は、日本航空と同じ構図ではないのか(政官財の癒着)。
  2. そもそも日本航空123便墜落事故の真実は明らかになったのか。

その政官財の構図です。

  1. 政:中曽根内閣
  2. 官:運輸省(含む事故調査委員会)、財務省
  3. 財:日本航空

山崎豊子氏は「沈まぬ太陽」の注釈で、以下の言葉を述べています。

多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関、組織なども事実に基づき、小説的に再編成した。

山崎豊子氏は政官財の悪しき慣習、既得権益、不当な利益供与、これらが悪習が破綻した時に、多くの人達が悲しみに暮れることを二度と起こしてはならないこと。それは現実であり、その過程を「沈まぬ太陽」で描いたと筆者は思います。

そして現在進行形で混迷の状態にある「国体」と世界情勢が、同じ道を進んでいる気がしてなりません。

失望した映画「沈まぬ太陽」

「沈まぬ太陽」は日本航空という当時腐りきった半官半民の現存する大企業と労組、政官財の癒着など、余りに各界への影響が大きく、この小説を映像化することは困難だと思っていました。

ところが2009年に映画化がされました。202分にも及ぶ大作。しかしながら筆者はこの映画を観終った時に、落胆し、怒りさえ覚えました。

「沈まぬ太陽」を映像化するには限られた時間の中で、様々な視点で構成する必要があり、その構成次第で「沈まぬ太陽」の出来栄えは良くも悪くも変わります。

映画「沈まぬ太陽」は恩地元(実在の人物、小倉貫太郎氏)の生き方に終始しました。

またあり得るはずのない検視に使われた藤岡市市民体育館での子供の遺言の朗読、陳腐なCG、事故に至った政官財と癒着した会社経営の追及などがほとんど無く、この映画のテーマを一言で言えば「恩地元の男の生き様」でしょうか。

Sponsored Products

山崎豊子氏は、そんな陳腐なことを書きたかったのではないと思います。

ちなみに藤岡市市民体育館は腐敗臭が抜けず、後に取り壊しになっています。

映画のあり方の限界を痛感した映画でしたが、なんとその年の日本アカデミー賞を総なめにしました。きっと「恩地元の男の生き様」が評価されたのでしょう。

映画「沈まぬ太陽」を観て、映画もスポンサーを気にするビジネス、やはり「沈まぬ太陽」の映像化は内容が内容だけに、どうしても商業視点になり、山崎豊子氏が世に問うた、人災が招く慟哭の映像化は無理なのだと思っていました。

Sponsored Links

WOWOWのドラマ「沈まぬ太陽」

しかし2016年にWOWOWが「沈まぬ太陽」を20回のドラマで放映しました。WOWOWのドラマは質が高く、これまで有料放送ならでは、得体の知れない圧力などを感じさせない、良質なドラマを世に送り出してきました。

筆者はこのドラマを観たくてしかたがなかったのですが、我が家はWOWOWの受信契約しておらず、レンタルが開始され、ようやく全回観ることができました。

WOWOWの「沈まぬ太陽」は少し突っ込みたいところはありますが、期待を裏切らない、見ごたえのある作品でした。

事故に至る経緯、恩地元(小倉貫太郎氏)の境遇、企業の腐敗、政官財癒着、そしてなにより山崎豊子氏が仮名にしつつ、名前がすぐにわかる政治家の面々がスーパーで紹介されています。観る価値の高い、真に良質なドラマだと思います。

現在Amazonプライムビデオで観ることができます。Amazonプライム契約者の方には是非観て頂きたいと切に思います。

 

「沈まぬ太陽」は終わらない1つ目の理由「東芝」

「沈まぬ太陽」は今から30年前の実話。この悲劇の反省から今の日本で同じような政官財癒着の企業経営は無くなったのでしょうか。

以下は筆者の個人的見解であり、推察です。

筆者は名門東芝が破綻した経緯がどうしても「沈まぬ太陽」と重なって見えてしかたがありません。というのも2006年の原発メーカー、ウェスチングハウス(WH社)の買収。これは誠に不可思議な買収です。当時の経団連評議員会議長は東芝相談役の西室泰三氏。

この買収を陰で支えたのは、当時東芝の相談役でもあった西室氏です。その後、WH社は7,000億円の損失があることが発覚し、2017年に倒産。

WH社の原子炉は民需だけではありません。原子力空母ニミッツ級が搭載する原子炉はWH社製です。他国に最高軍事機密を持つ企業買収など普通に考えてあり得ません。もし買収しても軍事技術の共有など出来ないし、それが盾になりWH社とまともな共同経営などできるはずがありません。

引用:Wikipedia様

案の定、WH社が保有していた軍用原子炉の技術は、東芝の買収前にアメリカのベクテル社に全て移譲されていました。

東芝はリスク付でWH社を買収したために、WH社が抱える莫大な負債を補填のために、虎の子だった半導体メモリ部門を分社化して売却。しかし甲斐虚しく、東芝はその後実質上破綻しました。

西室氏が東芝社長に就任した1996年には約7万人いた社員(単独です)は約4千人になり、約65、000名の社員が路頭に迷うことになりました。

引用:現代ビジネス様

ここに政官財の影が浮かびます。

そもそも業績不振だったWH社の原子力部門の引き取り手はアメリカに存在せず、同盟国であるイギリス政府に打診、1999年に英国核燃料会社(国有企業)が11億ドルで引き取りました。

その後、英国核燃料会社もWH社の経営を維持することが出来ず、2005年に18億ドル相当で売却する方針を立てアメリカ政府、イギリス政府を通じて日本政府に打診があり、日本の原子力産業を牽引する東芝、日立、三菱重工による入札が行われました。

当時三菱重工は、WH社と加圧水型(PWR)技術で親密な関係にあり、三菱グループが20億ドル台で落札するものと思われていました。ところが2006年1月に東芝が想定外の54億ドルという破格の金額で落札します。

しかし東芝が描いていた「原子力発電事業3倍計画」は高値掴みのWH社の負債と補填を背負って破綻します

当時は第3次小泉内閣時代、WH社が倒産する前年、2005年10月に「原子力政策大綱」が閣議決定され原子力発電の推進が決まっています(この頃の小泉氏はバリバリの原発推進者でした)。

そしてWH社買収推進に動いたのが当時の経産省、今でも原発推進派のI氏。I氏は第一次安倍政権、第二次安倍政権で首相秘書官を勤め。経団連繋がりで東芝との関係は長くて深い人物。

筆者は主役が出そろった感じがします。

  1. 政:小泉内閣
  2. 官:経産省I氏
  3. 財:東芝

名門東芝の破綻は、山崎豊子氏の「沈まぬ太陽」に描いた政官財の悪しき慣習そのもの。

歴史はこれら悪癖を繰り返すことを如実に物語っているように思います。

「沈まぬ太陽」は終わらない2つ目の理由 123便墜落事故の真実

山崎豊子氏は「沈まぬ太陽」で政官財の悪しき慣習が招く、悲劇の過程を描きました。

そして事故原因を追いかけたのが青山透子氏著「日航123便墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る」です。青山透子氏は事故原因の真実を問うています。青山透子氏が自身の人生をかけて、取材した事故の事実を追い求めた渾身の一冊です。

Sponsored Products

この本の出版には経緯があります。

青山氏は、同僚が最後まで乗客を守ろうと行動した乗務員の事実を調べるうちに事故原因へ疑問を持ちます。そして2010年に前著「日航123便 あの日の記憶 天空の星たちへ」を発刊します。

この本の問い掛けに呼応するように、これまで聞こえなかった声なき声、新しい証言、証拠が青山氏のもとにたくさん寄せられます。

そして青山氏は集まった情報と公開された事故調査委員会報告などとの矛盾点、隠蔽されたと思われる内容などを精査し、再編集したのが本書です。読めばわかります。青山氏は「断定」などせずに「なぜ」という問いかけをしています。

そして青山氏はこの本の中で「日航123便墜落は事故ではなく、事件ではないか」と推察しています。

青山氏の推察を非難したり、トンデモ本と論評する人達がいます。しかし情報に対して推察・考察することが非難されるなら経済誌、歴史本など数々のジャンルの書籍も非難されなければなりません。

本の内容はすでに様々なメディアから発信されていますので割愛しますが、筆者が感じた要点だけ述べたいと思います。

  1. 墜落していくジャンボ機を見ていた地元の貴重な目撃情報、現地にいた関係者の発言が無視されたこと。
  2. 事故発生直後に上野村村長(元ゼロ戦パイロット)、村民の方々が墜落を伝える行動が全て無視されたこと。
  3. 事故は米軍によって把握されているにも関わらず、発表時刻、場所などの発表があまりに不自然なこと。
  4. 事故現場は高天原山(たかあまはらやま)、しかし当時正式名称もない「御巣鷹山の尾根」になったこと

①②③は現代技術で様々な検証と見解、陰謀説も含めて断定的な膨大な情報が溢れています。

余談ですが、筆者がこの本を読んで個人的に気になったのが④です。

高天原山と聞くと「高天原(たかあまはら)」が浮かびます、「高天原」は古事記に記述がある日本の起源に繋がる場所です。

「高天原」の場所は特定されてはいません(高天原山は候補の1つとして研究されています)。「高天原山」が「御巣鷹山の尾根」に。筆者はとても気になります。

墜落地点:北緯36度0分5.41961秒東経138度41分37.68596秒(引用:ヤフー様)

まとめ 「沈まぬ太陽」は現在進行形?

今回東芝を一例にしましたが、筆者は実は同じ構図で、国家的な重大事故が現在進行形の状態にある気がしてなりません。

東アジアにおける日本の現政権の振る舞いを始め、世界の情勢は納得がゆかないことばかりです。

今、長い歴史を持つ日本という「国体」が破綻する危機にあるように感じます。

  1. 政:政府
  2. 官:財務省
  3. 財:経団連

「沈まぬ太陽」は終わらない。残念ですが筆者はそう思えてなりません。

※アイキャッチ画像引用:産経デジタル様

関連記事

野武士の精神を忘れた日立製作所 ここに一冊の本があります。「開拓者たちの挑戦ー日立100年の歩みー」 発刊は2010年です。筆者がまだ日立製作所に在籍していた時に、全員に配られた本です。 これからお話しすることは、筆者[…]

Sponsored Links
最新情報をチェックしよう!