野武士の精神を忘れた日立製作所
ここに一冊の本があります。「開拓者たちの挑戦ー日立100年の歩みー」
発刊は2010年です。筆者がまだ日立製作所に在籍していた時に、全員に配られた本です。
これからお話しすることは、筆者を育ててくれた日立製作所への辛辣なブログです。
しかし筆者は、今ここで日立製作所は方向を変えないと、かつての名門と言われた企業と同じ道を歩むことを危惧してます。
そして「外国技術に頼らず自らの手で工業を興すこと」を目指した、創業者小平浪平氏の志に立ち返って欲しい願いを込めて書いています。
引用:日経クロステック様
結局、創業以来の未曽有の経営危機に陥り、最終赤字が約7、800億円となりました。
未曽有の危機を救い、V字回復させた川村隆氏
引用:ニューススイッチ様
在籍当時の経験談ですが職場は危機感であふれていました。かつては”財務の日立”、または日立銀行と言われるほど潤沢だった資金が、それまでの無理筋なM&A、投資などで財務が大きく毀損し、キャッシュフローが大変危険な状態になっていました。
川村氏は2009年11月6日に新株式発行、いわゆる禁じ手である株の大量発行による希薄化を敢行。とにかく現金、キャッシュフローを整えるためにあらゆる手を尽くしたと思います。それも相まって株価は暴落します。
引用:かぶたん様
そして川村氏は、財務、調達、業務などの対策を矢継ぎ早に打ち出します
- 事業の選択と集中
- 聖域なき事業ポートフォリオの再編
- 大胆な不採算部門の処理
- IoT事業の戦略的拡大
この場では申し上げられませんが、人員体制、特に給与面でも様々な手を打ち、筆者は正直ビビりました。
そして川村氏は、社員の意識改革のために各事業所に足を運び、熱く講演し、「改革の意義と復活の決意」を述べたことが今でも記憶に残っています。
川村氏の危機感、決意、改革、実行の迅速なる行動で、社員は川村氏の思いを受け入れ共有し、社員は構造改革に協力しました。
そして2015年5月、日立製作所は3月期決算で過去最高の営業利益を達成し、V字回復を果たしました。V字回復貢献分野は都市開発や交通などのインフラ部門、社会イノベーション事業です。
以来、日立製作所は社会イノベーション事業に注力し、M&Aも活発化させています。
そして川村氏は産業界の宰相といわれる経団連会長を固辞し、現在東京電力の復活に尽力されています。
- 前と同じことをずっとやっていても、もう成長はない。
- 製品の集約をやり、組織(人)も集約しよう。
- 社の中の成熟産業から成長産業のほうに重心を移そう。
- 会社の役割は、社会に付加価値を戻すことである。
- そのためには売上高を上げることではなく、営業利益や最終利益を上げること。
こうした名言の数々を残して、川村氏は日立製作所を去ってゆきました。
野武士精神とは
筆者が1990年台の頃だったと思います。当時の部長に「なぜ日立の社長は経団連の社長にならないのか」と質問したことがあります。
すると部長は「日立は野武士集団なので、そんなものに興味はないからだ」と言ったことを記憶しています。
当時はあまり突っ込まず「日立は技術集団なのでそこを極める会社」と筆者は納得してこれまで過ごしてきました。
ところが最近知人から「日立の野武士の精神はどこへ行ったのかねぇ」という言葉を耳にしました。
そこで改めて「日立の野武士の精神」を調べてみました。
知識も実績も経験もない未知の技術に立ち向かい、「みずから調べ、みずから造り、みずから試す」という試行錯誤を繰り返す。一つ一つ課題を克服しながら己の実力を磨き上げ、その経験を後継の人材育成へと生かしていく。
質実剛健、独立自尊、不撓(とう)不屈。
そのような日立人共通の気質・気風がかつて「野武士」と言われた。
創業以来の企業理念の一つとして継承されてきた「開拓者精神」は決して言葉だけのものではない。
その本質は愚直なまでに一徹した実践の中にあったのだと思う。
日立社員であったことを誇りに感じる、日本人気質を正しく表現した精神だと思いました。
野武士精神を忘れた日立製作所
川村氏の言葉にある「会社の役割は、社会に付加価値を戻すことである」。
しかし今、日立は真逆の方向に向かっているように感じます。
- 経団連(会長)が消費税増税に賛成
- 日銀審議委員に日立製作所元副社長で同社取締役の中村豊明氏を指名(増税派)
- 日本の産業界を政府と連携しながら、中国とカップリングさせようとしている
特に③は2018年にニューズウィーク誌に辛辣な記事が載りました。
引用:ニューズウィーク様
更に今年の1月に正に噴飯ものの発言をしています。
引用:日経新聞様
こうなると呆れて物が言えません。
写真・記事引用:日経新聞様(2019年4月26日)
過去には雇用の日立と言われた会社の代表が、経団連の会長になった途端に「終身雇用雇用は産業界は支えられない」と政府の代弁者に成り代わったご丁寧な発言までしています。
引用:NEW24様
川村氏が残した言葉が虚しく感じます。
まとめ
今日立の事業構造はグローバル化を推し進めたためにリスクが高いと思わざるを得ません。少なくとも筆者の2000年頃の記憶ですが中国の会社は50社くらいだった思います。
また当時、日本国内には1、300社くらいあったと記憶しています。国内から中国へシフト。外人取締役主導の海外のインフラ会社のM&A。
特に中国は資本移動が厳しく制限されているために、得た収益は地産地消で運用しなければなりません。
国内の会社を整理統合して、グローバルの名のもと「日立は役割の約10%を中国に移し、中国社会に付加価値を戻している」状態です。
そして日銀審議委員に指名された中村豊明氏は、民主党政権下で行われた「社会保障・税一体改革特別委員会」の中央公聴会に公述人として出席し、日本経済団体連合会(経団連)税制委員会企画部会長の肩書で出席。そして中村氏は、民主党政権が決めた「社会保障と税の一体改革」という名の消費増税路線に賛同した、消費増税容認ではなくバリバリの消費税増税推進派です。
もう一度川村氏が残した言葉を見てみましょう。
- 前と同じことをずっとやっていても、もう成長はない。
- 製品の集約をやり、組織(人)も集約しよう。
- 社の中の成熟産業から成長産業のほうに重心を移そう。
- 会社の役割は、社会に付加価値を戻すことである。
- そのためには売上高を上げることではなく、営業利益や最終利益を上げること。
消費税は消費することへの罰金です。
新型コロナウイルスは今回だけではありません。
かつてはSARS、鳥インフルエンザ。これから何度も同じような事態がおきることでしょう。
「日本国民を、自国の技術で豊かにすること」が日立製作所創業者小平浪平の志。
引用:日立製作所様
これまで100年以上かけて築きあげた名門日立を、晩節を汚すことにならないよう、基本に立ち返り、日本から世界に尊敬され、貢献できる企業に立ち戻ってください。かつての名門企業が辿った悲しい結末とならないように。
元社員からの切なる願いです。
※アイキャッチ画像は東洋経済様から引用いたしました。
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