「5G」が描くITの世界観は実現するのだろうか
最近、街路樹の伐採が目につきます。剪定ではなく街路樹そのものを切り倒してしまいます。夏になれば重宝する街路樹の日陰、なぜ街路樹を切り倒すのでしょうか。
1つの仮説ですが街路樹は広葉樹が多く、秋になると落ち葉となり、近所の方がせっせと落ち葉の掃除をしています。これまで四季が織りなす風物詩として見てきました。しかし掃除してくださる方の高齢化でその掃除もできなくなり、役所へ相談して伐採することになったのではないかと。
そして今回のテーマ、筆者は内心「街路樹の伐採には5Gが絡んでいるのではないか」と邪推しています。以下はあくまでも筆者のIT的仮説なのでその真偽は検証できません(._.〃)ゝ
ちなみに筆者はシスコシステムズ社の認定資格「CCNP」と「CCDP」を取得し、通信キャリアのソリューションを開発していた事業所に在籍していたこともありました。
以降、そんな筆者が考察する「5G」のお話しです。
最近IT系ニュースで取り上げられる「5G」。通信キャリアのテレビCMでも最近良く見かけるようになりました。メディアで訴求する「5G」の主な技術的優位性は下記になります。
「5G」の主な技術的優位性
・低遅延。
・多数同時接続。
想定している利用シーン
・遠隔医療が実現。
・IoTの応用範囲が広がる・・・などなど。
「5G」のメリットだけを考えると様々な応用例が思いつきます。
身近な技術的メリット
筆者は家族全員で格安SIMを使っています。時間帯によりますが、通信速度を測定アプリで測ると100Kbpsなることなどざらにあります。特に移動時間などで帯域がなくてニュースなどが観れない時は誠に残念な気持ちになります。
でもそんな時に備えて、事前にアマゾンプライムなどから映像や書籍のコンテンツをダウンロードして観るようにしています。
テレビCMを見ているとこうした不便さを「5G」は一気に解消し、誰でも高速に、そして映画など大きな要領のコンテンツを数秒でダウンロードできるようなるなど、普段使いで利便性が大きく向上しそうです。
利用シーンでのメリット
利用シーンののメリットを「自動運転」「遠隔医療」「IoTの応用」で一気に説明するとこんな感じです。
スバルのアイサイト、日産のプロパイロットなど運転支援システムはカメラとセンサー技術で成り立っています。
筆者のクルマはアイサイトを搭載していますが、道路のラインがないと運転のアシスト機能は停止します。この課題を「5G」は低遅延な特性を活用して、GPSと地図アプリと連携して、カメラやセンサーに頼らない運転を実現します。
有名な外科手術医師がアメリカに居るとします。今はその医師の手術を受けたい場合は渡米して受けることになります。しかし高速通信が可能なら、マニュピレーターなどの機械を使って手術をするなど、孤島などでの遠隔医療に貢献することができます。
工場のプラントでトラブル発生!!現場に駆けつけて修理・復旧。このリードタイムを大幅に短縮することができます。
設備のあちこちに取り付けた「5G」のセンサー機器からリアルタイムな機器情報を収集し、ビッグデータ処理で予防保守を行いトラブル発生率を大きく下げることができます。
以上「5G」のメリットをザっとおさらいしてみました。
さて、ここからが筆者の稚拙な脳みそで浮かんだ、冒頭の仮説の論拠です。
そもそも5Gとは
「5G」とは第5世代移動通信システム「5th Generation」の頭文字を取って「5G」と称しています。
電波のベースバンドは国によって違いはありますがマイクロ波(日本では28GHz辺りで検討)を利用します。
マイクロ波と聞くと筆者はアニメの”サマーウォーズ”を思い出してしまうのですが、映画の中で自衛隊の通信車両が登場して、パラボラアンテナを空に向けて通信を始めます。
写真引用:wikipedia
そのシーンでわかることが2つあります。
・障害物がない宇宙空間を経由した通信。
上記を思い浮かべながら「5G」が描く世界観を実現するための課題を整理してみましょう。
そもそもミリ波とは
ミリ波にはある特性があります。
・指向性が狭い。
・障害物への透過性が低い(雨、雪などで電波は減衰する)。
・ミリ波のアンテナ設備は高周波用に半導体にガリウムヒ素を使用。
・既存のアンテナ設備はシリコン系半導体なので流用がなどできない。
そうです、ミリ波は”光”に近い特性を持つと考えて良いと思います。
現状「5G」はNRという課題を抱えています
NR (New Radio)とは5Gのモバイルネットワーク用に必要な無線アクセス技術の総称で、4Gでは確立した技術です。端末・端末間接続、端末・クラウド接続などの接続要求管理、またトラフィック規制、緊急時の通信規制などの制御を行います。
実は「5G」NRはまだ技術標準が決まっていない状態です。ですので既設4G設備のアクセス技術と併用する方法が今のところの現実解です。
5Gは通信経路
「5G」はあくまでも通信経路に関する技術です。
ということは、例えばセンター側、例えばクラウドサービスなどのサービス処理基盤が変わらなければ、そのサービス利用者は「5G」の恩恵を享受できないことでしょう。
そしてサービス利用者対応でサービス事業者は分散型処理基盤の導入など投資が必要になります。
これで経済が回る、と言う考えもありますが。。
5Gの設備
先ほど申し上げたようにアンテナは既存のものと違い、新しいアンテナを設置する必要があります。しかし直行性が高く、電波の減衰要因が、雨、雪、枝葉など様々で、「5G」の電波が届く地域をカバーすることは容易なことではありません。
そして今の何倍ものアンテナが、しかも高周波のアンテナが街中あちこちに設置されることになるでしょう。
電波ばく露の問題
ベルギーで「『5G』の電波を吹かせたらムクドリがバタバタ死んだ」などというニュースがありました。真偽は定かではありません。しかしなぜこのようなニュースが流れるかというと、日本の総務省も「電波の人体への安全性に関する評価技術 」の中で「10GHz以上における先行研究は少なく詳細な検討は実施されてこなかった」と報告しています。
また「5G」アンテナが密集することで、「5G」の電波は高いレベルの電磁放射線となり、皮膚を熱して熱損傷を引き起こすなといった人体への損傷を危惧する声もあります。
ちょっと怖い話ですね。導入前にちゃんとした健康に対する調査はして欲しいものです。
次世代通信への期待
既に5Gを超えて、6Gの技術検討が行われてます。更に大容量で、”シャノンの通信路符号化定理”に沿って周波数は更に上がりそうです。
シャノンの通信路符号化定理とは
1948年に天才クロード・シャノンが発表した定理で、通信回線の信号対雑音比(S/N)と、使用する周波数の帯域幅によってデジタル信号の伝送速度の限界が決まってしまうという理論。
ならば、日本ならではの「6G」技術を開発することはできないものでしょうか。日本は「5G」では完全に出遅れています。というか国内通信機メーカーは玉砕状態です。
しかしこれまで述べてきた「5G」には課題があります。そこにチャンスを見出し、奇貨とし、政府も支援して日本発の通信技術を生み出して欲しいものです。
例えば、かつてKDDIが熱心に研究していたMIMO技術術を応用するとか。
引用:日経クロステック様
【MIMO(Multiple Input Multiple Output)とは 】
無線通信を高速化する技術の一つで、送信側と受信側がそれぞれ複数のアンテナを用意して、同時刻に同じ周波数で複数の異なる信号を送受信できるようにして、帯域幅や送信出力を強化しなくともデータのスループットやリンクできる距離を劇的に改善できる技術。
現状の「5G」では様々な課題と、まだ研究と検証すべき事項があり、導入に対して少し勇み足な感じがします。
お隣韓国では先陣を切って「5G」の試験を始めました。しかし「通信の途切れ」「繋がらない」などの事象が起きています。
それと法整備も含めてリスク管理も大事です。
【遠隔医療】通信が途切れて手術が中断した場合のバックアップ体制。
【IoT】通信が止まりプラントが停緊急した場合のバックアップ体制。
そしてなにより「5G」の設備、特にキャリアはアンテナ設備投資などに大きな費用がかかります。その割りに「5G」で描く利用シーンが、その投資額を回収できるほどに利用者にとってニーズがあるかというビジネス的課題があります。
筆者の場合(立派にB2Cの一例だと思いますが)先ほど述べたように格安SIMで不便なところは工夫して対処しています。また現状のモバイル通信で何も困ってはいません。
あまり焦らずに、「5G」の普及により多くの人達の役に立つことをまず第一に考えて、そして安全・安心を担保してから「5G」を導入したらいかがでしょうか。
そう思うのは筆者だけでしょうか。