緊急レポート 株高と円安の原因は何か
結論から先に。
「円が売られ、ドルとなり、アメリカ株式市場に流入しているからです。」
原因はコロナウイルスでもなく、暖冬でもなく、中東の地政学リスクでもなく、中国経済リスクでもありません。
筆者はこのブログの各ページに表示されている「お知らせスライダー」で毎週日曜日にその週の株価予測を天気予報に置き換えて載せています。少々わかりにくい短文で恐縮ですが、マクロ感ではありますが、これまでまあまあな確度だったと自負しております(自画自賛です)。
しかし先週の相場は筆者にとって想定外でした。円安で株高。「景気の”気”は、気持ちの”気”」。
国内の株式市場に対するプロの観測ですが「新型肺炎の拡大でサプラチェーンが分断され、初動が遅れた日本の対応もあり株価は下がる」言った論調を多く見かけました。
かく言う筆者も大方その動きを推察していました。結果は先週見ての通りで続落するも軽微です。株価は高止まりしています。これは想定外です。
まして3Q(2019年10月~12月)のGDPはマイナス、そしてあらゆる経済統計値が悪化しているのにも関わらず。
筆者が参考にしている情報の1つ、海外投資家動向もその方向性を示唆していました。
海外投資家動向
最初に対日経平均です。
引用:株式会社ストックブレーン様サイト
明らかに海外投資家の動向は日本株に対してネガティブです。
続いて対日経225連動型上場投資信託で見た場合です。
引用:karauri.net様
いずれの場合であっても株価の下落指向に見えるのに下落は軽微でした。
最近気になる合点がいかないこと
少し脱線しますが、筆者が最近の出来事で株価と照らし合わせて、合点がいかないことがいくつかあります。特に下記3つは合点がいきませんでした。
・黙示の中、なぜ米軍と自衛隊がこれまでにない連携が強化された訓練をするのか
・日本の経済が消費税増税を契機に奈落になるかもしれない時になぜ安倍政権はなにもしないのか
この”合点がいかないこと”が、冒頭で申し上げた「円が売られドルとなってアメリカ株式市場に流入している」と仮定した場合、すべて密結合してしまうのです。
筆者の論拠、それは1996年のあの方の、あの一言
若い世代の方は記憶にないかもしれません。しかし筆者のような投資歴30年のキャリアを持つような個人投資家の方々にとって1996年は経済が大転換した年として記憶に刻み込まれています。
始まりは1991年1月にアメリカ民主党ビル・クリントン政権の発足です。その当時のアメリカの最重要課題は経済の再生でした。貿易敵国は日本。クリントン大統領は経済の再生を目的とした「国家経済会議」を組織。その組織に就いたのが投資銀行ゴールドマンサックスに26年間勤めたロバート・ルービン氏です。その後6年間アメリカの経済政策を一手に引き受けます。
そして1995年、日米経済摩擦の中、アメリカ産業界の要望もあって自国の輸出を有利にするためドル安政策を続けた結果、円は対ドルで80円を切る超円高になります。
そしてこの年、ルービン氏は財務長官に就任し、金融の力でアメリカを再生するために運命の一言を言い放ちます。
これは当時驚くべき発言でした。同時に「グローバル市場経済は繁栄への近道」と発言しました。
ルービン氏はこの後、この言葉通りにクリントン大統領の加護を得て、財界の反対を押し切って金利を上昇させ、一気にドル高に舵を切ります。この時から世界のマネーはドルへ還流し、ダウ株価は上昇します。アメリカ産業が大転換します。
同時期の日本はバブル崩壊の後遺症で金融不安が広がり公定歩合を0.5%に引き下げる有様。日本はかつてない超低金利時代となり、当時の日本の金融資産1200兆円も、この大きなマネーのドル還流に加わりました。
そして追い風のように1997年、「デリバティブ理論」でロングタームキャピタル社(通称LCTM)に所属する2名経済学者がノーベル経済学賞を受賞します。考え方は「理論が市場を形成するもの」。
- マイロン・ショールズ(スタンフォード大学教授)
- ロバート・マートンで(ハーバード大学教授)
引用:Wikipedia様
この理論に沿ってLCTM社は、政府が推し進めるグローバル自由経済政策の波に乗り、デリバティブ手法でグローバルに弱肉強食な「投機」を仕掛けます。
そうです。聞き覚えのある「国際通貨危機」を引き起こします。タイ陥落、インドネシア陥落、韓国陥落、更にブラジル陥落。(マレーシアのマハティール・ビン・モハマド首相は唯一金融鎖国を実施し、戦いました。)
しかしそんな理論もあのロシア連邦の初代大統領ボリス・ニコラエヴィチ・エリツィン氏の逆襲で脆くも崩壊します。
それは1998年8月17日、ロシアの国債償還繰り延べ宣言。簡単に言えば「国の借金返済を凍結すること」を宣言したわけです。この宣言はさすがのノーベル経済学も予測できない事態となり、マネーはブラジルを皮切りに一斉に引き揚げを始め、世界経済は世界同時株安となり大混乱し、LCTMは資産の半分を失い経営危機に陥り、アメリカ政府が支援することになります。
円安株高の構図
長々申し上げました過去のドル高政策ですが、今と通じるものがあります(当時は「円高株安」でしたが)。
繰り返しになりますが、
・黙示の中、なぜ米軍と自衛隊がこれまでにない連携が強化された訓練をするのか
・日本の経済が消費税増税を契機に奈落になるかもしれない時になぜ安倍政権はなにもしないのか
の理由を端的に言えば、
- 調達コストの安い円で株を買うことでアメリカを株高にする
- そのために円売りでドルを買い円安になる
米中戦争の最中でも日本は中国接近にしてでもアメリカへドルを還流し、ダウの高値を維持し、米軍はそんなお金持ちの日本を助けるよ。その代わりに日本の経済は消費税増税などをしてでももう少し低迷していてね。
まとめ
※投資・投機は自己責任でお願いいたします。