時事落語 嘘つき習次郎

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時事落語 嘘つき習次郎

え~、毎度馬鹿馬鹿しいお笑いを一席。

しかしなんですねぇ。。世間様じゃなんかへんてこな小さい奴が悪さしてるみて~で、もう大変な騒ぎだ。あたしゃなんかもう老眼でね、ちいせ~モノなんか、メガネがねえと、もうどこにいるんかさっぱりわかりません。ほんと、歳はとりたくないですねぇ。おかげでここの寄席もね、へんてこな小さい奴のせいで、だーれも来やしません。商売あがったりだぁ。

今日のお客さんは一人だけ、来てくれてうれしいね~。

さて、嘘つきという奴はいつの時代もおりまして、今もいますねえ、大嘘つきが。
そんなお笑いを一席。

“岩田のご隠居”がお茶を飲んでいると、そこへ顔馴染みの若造、習次郎がやって来ます。

ご隠居
おう、習次郎しばらく見かけねぇな。
習次郎
ご隠居、この習次郎、よその国で悪い奴をやっつけてきましたぜ!

と自慢話を始めます。習次郎の話しによると、

習次郎
ご隠居、頃奈の国は、流行り病(やまい)が広がって、お国の民は恐くて、飯も食えないありさまでさ。そんなんだから、水も飲まねえ、出歩かねえ、ご近所さんと挨拶なんかもしやしねえ。

とご隠居に話しだします。

ご隠居
おう、そりゃてーへんだ。習次郎、それでお前さんはいってぇ頃奈の国でなにをしてきたんだい。
習次郎
ご隠居、よくぞ聞いてくださった。なんでも奉行所が町の衆を出禁にしたもんでよ。この習次郎がでー活躍してきたというわけでさ。

 

ご隠居
そうかい、でもよ、習次郎、なんでお前さんは出禁の町を歩けたのかい?さては習次郎、得意の嘘とホラ吹きを使ったな。
習次郎
それが、ご隠居。この習次郎を見た奉行所の連中がよ、おいらを殿と呼ぶのよ。すぐに奉行所に連れてかれて、そりゃもうドンちゃん騒ぎ、ねーちゃんはべっぴんだわ。まるでこの世のものと思えねー夜だったのよ。

ご隠居
おいおい習次郎、年寄りに嘘を言うでないぞ。お前ごとき分際が奉行所からそんな接待を受けるわけなかろう。せいぜいハラワタ抜かれて川にポイが関の山だよ。
習次郎
ご隠居、そこなのよ、頃奈の国の殿様がよ、この習次郎の熊顔にそっくりなんだと。。

 

ご隠居
おう、そう言えば習次郎、お前、前よりデブになったな。人相も悪い。
習次郎
まあ聞いとくれ、そこで奉行所から悪巧みを聞いてな、その殿様に成り代わって悪事を働いたってわけよ。

 

ご隠居
ほれみろ、やっぱり習次郎はろくなことをしやしねえ。
習次郎
ご隠居、話は最後まできくもんでい。

 

ご隠居
お、言うね。聞かせてもらおうか。
習次郎

奉行所の連中に聞いたら、その流行り病は殿様がばらまいたってわけよ。したら町民は困るわけだ。出禁だしな。そこで食べ物や水や偽薬を高値で売って大儲けするってすんぽうよ。

ご隠居
いやな殿様だねぇ。。
ところで
ほれみろ、やはり習次郎はろくなことをしやしねえ。
習次郎

だからご隠居、話は最後まで聞けって。なんだって頃奈の国はデカイのよ。そこでよ、奉行所の連中じゃ足らなくて隣町の火消しなんか呼んでよ、しまいにゃ牛まで繰り出して、
牛も疲れて、これが本当の「焼けウシに水」。牛も嫌がってがって「モーやだ」ときたもんだ。

 

ご隠居
馬鹿馬鹿しい、くだらないダジャレを言ってんじゃないよ。
そもそもなんでお前と奉行者は流行り病にかからねえんだよ。
習次郎
それなのよ、流行り病にかからねえ効き酒があってな。皆んなそれを飲んで大儲けしたってわけだ。

ご隠居
習次郎、やはりお前は愚か者だな、死んだおっかさんがあの世で泣いてるよ。
習次郎
ところがよ。

 

ご隠居
なんだよ。
習次郎

その肝心の利き酒が効かなくなってきたのよ。奉行所の連中もバタバタ倒れちまってよ、仕舞いにゃ、こき使ってきた牛が怒って追いかけてくる始末。「もうウシしまいだー」ってな。
牛が追いかけてくるは、そしたらよ散々なところに本物の殿様が現れたってわけよ。

 

ご隠居
それでどうした。
習次郎
この殿様がまた使えねー奴で、おいらと一緒に、牛と流行り病から逃げて、恐山へ逃げ込んだわけよ。

ふもとの茶店で話を聞くと、恐山の山中には米組という強い山賊がいると申します。案の定、米組に「金を出せ」と脅されますが、習次郎はひるまず大立ち回りを演じる。
四方の大岩を小脇に抱え・・」
「3間四方の岩を小脇に抱え・・」
「その岩をちぎっては投げ・・」・・

ご隠居
お餅だよ、それじゃ。習次郎、嘘をつくんじゃねーよ。
習次郎
でも、おいらは嘘をつきまくって米組を追っ払ったんだぜ。

 

ご隠居
おいおい、結局嘘かよ。ところで、その殿様はどうしたんだい。
習次郎
なんだかよ。米組一味50人くれーに囲まれてよ。身ぐるみ剥がされて裸でお屋敷に逃げ込んだと聞いたぜ。お屋敷には流行り病の原因が殿様と聞かされた家来ばかりで、なんか仲間の遠い南国に逃げる算段をしてるって聞いたぜ。

 

ご隠居
おまえは馬鹿だねぇ。お前の嘘など米組には通じないぜよ。負けて逃げたように見せただけさ。
習次郎
おっ、ご隠居は米組のことを知ってるのかい。

 

ご隠居
習次郎、知ってるも何も、おいらは米組の組長だからな。
習次郎
ぎょぎょ。。

 

ご隠居
さっきから聞いてりゃ言いたい放題、これ習次郎、お前は偽物だな。
習次郎
ご隠居、俺は習次郎だよ、あんたの知ってる習次郎!

 

ご隠居
ふふ、ではその腰にぶら下げている殿様が吹く貝はなんなんだ。
習次郎
これは「ホラを吹いた」ホラ貝さ。

 

ご隠居
曲者じゃ、ひったてい!監獄で一生ホラを吹くが良い。

「うそつき弥次郎」、おっといけねぇ。目も悪いが頭も悪い。「嘘つき習次郎」の一席でした。

 

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